街が沈んで 長い年月のあと
大地は浮上し 廃墟となった街は再び地上に現れた
やがて人々が住み着き 街は再び活気を取り戻した
新たな街の人々は 海底で腐食した人の彫刻を見つけ
これはこの地の神の像だと考えた
像を崇める人が増え やがて 像を神とした信仰が生まれた
像から導きの声が聞こえるとほらを吹いたものが教祖となり
彼の組織が街を支配した
街に暮らすひとりの少女 彼女は両親と仲睦まじく暮らしていた
ある日 少女は街はずれで見つけた ひとつの像に魅入られた
憧れと憂いを宿し 微笑む少年の像
像の目を覗き込むと 少女の頭に曖昧なイメージが去来し始めた
それは 像が宿した過去の記憶と感情
その奔流の中で少女は 自分はこの少年の生まれ変わりなのだと悟った
絵を描きたいという衝動が突如湧き上がり 少女は足早に帰路に着いた
街の掟では 像の絵を描いてはならなかった
少女は両親の目を盗んで像の絵を描いた
ある日 少女が隠していた絵を 両親が見つけた
両親は少女を密告し 少女は罪に問われた
少女は神官に問うた「なぜ像の絵を描いてはいけないのですか」
神官は答えた「それが掟だからだ」
怒り 疑念 情熱 少女の思いを受け止める者はいなかった
両親でさえも
少女は街を追放され 街の外に広がる森へ追いやられた